ターがついていて、一階で待っていると、誰
が乗ってきてこっちに向かっているかがわか
る。しかし、エレベーターの中にはモニター
がないから、一階に人がいるのかどうかもわ
からない。これが大好きだ。
ノンフィクションとかドキュメンタリーは大
好きだけど、賛否にかかわらず、対象と作り
手と見る側が一直線に並びやすいところがつ
まらない。だから、見る側としては、微妙に
身を躱してしまう。そういう意味で、エレベ
ーターのモニターは、ノンフィクションでも
ドキュメンタリーでもない。
『パラノーマル・アクティビティ』は、フィ
クションだ。面白さを狙った、ただの作り物
だ。その手法は、ノンフィクションとかドキ
ュメンタリーを装ったものではなく、いわば
エレベーターのモニターを真似たものだ。見
る側、見られる側の存在が曖昧な状態を真似
たものだ。
盗撮というのは、実につまらない。エロティ
ックなものでも、なんでも、単にある恣意的
な方向に引きずられる映像だ。見られる側、
見る側がこれ以上ないほど明確で、少しも面
白くない。
『パラノーマル・アクティビティ』の、何か
事が起こる前の、何もない普通の状態が、ホ
ントは好きなんだけど。ずっとそれでもいい
んだけど。